修繕積立金の値上げに反対する前に知ってほしい、理事会が抱える現実
マンションの総会で修繕積立金の値上げ議案が提出されると、反対意見が出ることがあります。
「なぜさらに値上げするのか」
そう感じる方も少なくないでしょう。私自身も区分所有者の一人ですから、修繕積立金が上がることを歓迎しているわけではありません。
しかし、理事会の役員として大規模修繕の準備に関わる中で見えてきた現実があります。
この記事では、修繕積立金の値上げをお願いする側になって初めて分かった理事会の葛藤や、私たちがどのような思いで検討を進めているのかをお伝えしたいと思います。
理事会も値上げしたくてしているわけではない
誤解されがちですが、理事会の役員も同じマンションの住民です。
理事だから修繕積立金を払わなくてよいわけでもありません。
値上げによる負担は理事会役員にも同じようにのしかかります。
私たちもできることなら値上げを避けたいと思っています。
実際、理事会の中でも、
「何とか現状の積立金で対応できないか」
「他に方法はないか」
という議論を繰り返しています。
しかし、大規模修繕に必要な資金と現在の積立金残高を比較すると、厳しい現実が見えてきます。
感情ではなく数字で判断しなければならない局面があるのです。
大規模修繕を前に見えてきた厳しい現実
近年、大規模修繕工事を取り巻く環境は大きく変化しています。
建築資材の価格は上昇し、人件費も高騰しています。
その結果、数年前に作成された長期修繕計画の想定金額では工事が実施できないケースも珍しくありません。
私も役員になるまでは、
「大規模修繕は積立金で何とかなるだろう」
と漠然と考えていました。
しかし、実際に資料を読み込み、説明を受ける中で、工事費が当初想定を大きく上回る可能性があることを知りました。
今の時代、人手不足で職人さんは引っ張りだこ。
人件費の上昇が続いています。
さらに資材の高騰。
このまま何もしなければ、
- 修繕内容を削減する(長期的に考えると、建物の価値を下げてしまう恐れがあります)
- 一時金を徴収する(一時金をポンと払える所有者は多くない)
- 借入を行う(管理組合の運営が上手くいっていないと判断され、マンションの資産価値が下がる。)
といった選択肢を検討しなければならなくなる可能性もあります。
理事会は、そうした事態を避けるために議論を重ねています。
値上げをお願いする以上、理事会には責任がある
私は役員として活動する中で強く感じていることがあります。
それは、
住民に負担増をお願いする以上、理事会には大きな責任がある
ということです。
単に「お金が足りないから値上げしましょう」では、住民の理解は得られません。
理事会は、本当にその金額が必要なのか、無駄な支出はないのか、徹底的に確認しなければならないと思っています。
だからこそ私たちは、大規模修繕について勉強を続けています。
工事業者の言いなりにならないため、住民の皆さんから預かった大切な修繕積立金を無駄なく使うためです。
私たちは工事会社の言いなりにならないための「武器」を集めている
大規模修繕を検討する中で私が感じたのは、知識の差の大きさです。
工事会社や設計事務所は数多くの修繕工事を手掛けています。
一方、マンションの役員は、大規模修繕を経験する機会が限られています。
知識や経験には大きな差があります。
そのため、何も知らないまま打ち合わせに参加すると、気づかないうちに相手の提案をそのまま受け入れてしまう可能性があります。
私はそれを避けたいと思っています。
そのために、
- 大規模修繕に関する書籍を読む
- 他マンションの事例を調べる
- 発注方式の違いを学ぶ
- 相見積もりの考え方を勉強する
- コンサルタントの役割を理解する
といった取り組みを続けています。
私にとって、これらの知識は工事会社と戦うための「武器」です。
もちろん、対立したいわけではありません。
工事会社も大切なパートナーです。
しかし、住民から集めた大切なお金を使う以上、言われるがまま契約するのではなく、対等な立場で議論できる知識を持つことが必要だと思っています。
本当に大変なのは「お金の話」をすること
大規模修繕そのものより難しいのは、お金の話かもしれません。
工事内容の説明は比較的理解してもらいやすいものです。
しかし、修繕積立金の値上げとなると話は別です。
住民一人ひとりに事情があります。
子育て世帯もあれば、年金生活の方もいます。
だからこそ理事会には説明責任があります。
なぜ値上げが必要なのか。
その金額は妥当なのか。
他に方法はないのか。
それらを丁寧に説明し、納得していただく努力が必要だと感じています。
理事会と住民は対立する関係ではない
時々、
「理事会 対 住民」
のような構図で語られることがあります。
しかし、私はそうは思いません。
理事会も住民です。
目指していることは同じです。
それは、
自分たちのマンションを適切に維持し、資産価値を守ること
です。
修繕積立金の値上げについても、
賛成か反対かではなく、
「このマンションを将来にわたって維持するにはどうするべきか」
という視点で考えることが大切だと思います。
まとめ
修繕積立金の値上げは、誰も望んでいるものではありません。
理事会役員も同じ住民であり、自らの負担が増えることを歓迎しているわけではありません。
それでも値上げを検討するのは、将来の大規模修繕に必要な資金を確保し、マンションを適切に維持するためです。
そして私たちは、住民の皆さんに負担増をお願いする前に、工事会社の言いなりにならないよう勉強を重ねています。
適正価格を見極めるための知識を身につけ、預かった修繕積立金を無駄なく使うための「武器」を集めています。
修繕積立金の値上げは苦しい決断です。
だからこそ、その決断に見合う努力を理事会として続けていきたいと思っています。
